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パフォーマンストレーニングの理論と実践

Vol.4 パフォーマンスを高めるための原理原則 ー VariabilityによるSelf-Organization ー

前回までは、人間の体を動かすにあたっての根源的な問題に触れていきました。
そして多くの運動制御理論ではこれらの問題を解決するべく研究が進められています。

運動制御に関する既存の理論を融合したNewell’s Constraints Model (1986) によると
動きのパフォーマンスは3つの要因によって決定する、とされています。

①運動が実行される環境
②トレーニングしている動き(タスク)
③運動を実行している生体

これら3つによって特定される制限・制約の相互作用によって、コーディネーションの最適なパターンは決定されます。

上記3つの変動性(Variability)、
環境の変動性、タスクの変動性、生体の変動性、
これらは、運動指導において重要なキーポイントになります。

何故なら、人間の動作学習とは、
2つの動作の違いから共通点を見出し動作を学習している、と考えられているからです。
これは”Differential Learning”(Schollhorn)という概念として知られています。

運動学習には刺激が必要であって、
運動出力と感覚入力の慣れていない組み合わせによって、動作学習は生じます。
慣れている動作の繰り返しの中に運動学習に必要な刺激はあまり存在しません。

動作の巧みさが必要になるかどうかは、
動作の種類によって決まるのではなく、動作を取り囲む条件によって決まります。(Bernstein)

運動の現象や動作そのものをトレーニングするのではなく、
動作を安定化させる共通項をトレーニングの中の様々な変動性から見つけ出さなければならないのです。

変動性は適応に大きな影響を与えます。
つまり、「変動性に如何にして適応するか」がキーポイントになるのです。

運動出力と感覚入力の慣れていない組み合わせによって、
動作の中での安定性の共通項が見出されます。
それらは、”Attractor”(動作を習得する上で外してはいけない要素)とも呼ばれており、
この”Attractor”を掴むことが動作の向上に必要となります。

要するに、非機能的な安定した状態から
機能的な安定した状態にするためには、変動性が必要なのです。

分かりやすく言い換えれば、
代償動作や望まない動きが安定している状態を、適切な動作で上書きしたいのであれば、
代償動作や望まない動きを不安定にしなくてはならないため、
変動性が必要になるということです。

ただの反復練習から、感覚受容器や皮質下への刺激が豊かな練習へ。
過剰に意識させる指導から、意識させずに自動化していく指導へ。
内的フォーカスをさせるキューイングから、外的フォーカスをさせるキューイングへ。
そして、意識的な階層型制御から、自動化された分散型制御へ。

20世期後半に、Dynamic System Theory(DST:ダイナミックシステム理論)が提唱されたことから、
運動制御システムの複雑化した相互作用を説明できるようになりました。

多様な運動変動性に適応することで”Attractor”を深く掘り下げていく、
そして、”Self-Organization”(自己組織化)を進めていくことが運動指導において大切なのです。

そのために、我々運動指導者は、
どのようなトレーニング、
どのようなコンディショニング、
どのようなリハビリ、を行うべきなのかを
常に、Growth Mindset(成長マインドセット)で考え続けていかなければなりません。

 

【参考文献】
・La Preparacion Fisica en el Futbol  Rafel Pol
・High-Performance Training for Sports  David Joyce / Daniel Lewindon