KNOWLEDGE

パフォーマンストレーニングの理論と実践

Vol.1 パフォーマンスを高めるために必要な思考の枠組み

私たちは、人体の性能・遂行能力のことを「パフォーマンス」と呼んでいます。

つまり、スポーツパフォーマンスが向上することのみならず、
腰痛が治る、肩こりが治る、筋肉がつく、ダイエットが成功する、など、
現状よりも向上すること全てを「パフォーマンスアップ」と呼んでいます。

この「パフォーマンスアップ」のために最も必要な要素として、
「Mindset:思考の枠組み」が挙げられます。

学びを深める上で、「どのような思考をもって学ぶか?」は大変重要です。
さて我々トレーナーは、どのような思考を持って運動指導に当たるべきでしょうか?

人間には、2つのマインドセットがあると言われています。(Dweck 2000)

知性は固定的であり変化することはできないという信念は、
Fixed Mindset(硬直マインドセット)と言われています。

片や、知性は変化可能で発達することができるという信念は、
Growth Mindset(成長マインドセット)と言われています。

トレーニング理論とは、厳密なサイエンスではなく、
サイエンスと自身の信念や哲学の間に存在するものです。

故に自分自身の理解は不充分であるという認識のもと、
情報をアップデートし、常に自身の理論をスクラップ&ビルドしていくことが求められます。

知らないことを自覚すること。
つまり、「無知の知」です。

新しい事実の観点から、今行なっていることを修正し続けていくことが必要です。
たとえ、それが自分が信じ続けていたものが間違っていたと示すものであったとしても、
新しい知見に心を開き続けることです。

つまり、Growth Mindset(成長マインドセット)を持つことが
高度専門職に最初に必要な「心構え」であると私たちは考えています。

そして、クライアントの成果を出すために
私たちは教育者でなくてはなりません。

腕の良い歯医者に治療をお願いしたところで、歯磨きの仕方が間違っていれば、
虫歯を防ぐことはできないのです。

大切なことは、正しい歯磨きの仕方を教えることです。

私たちは、お腹が空いた人に
魚を与えるのではなく、魚釣りの仕方を教えたいのです。

学習過程に学習者自身が主体的に関わり、
自己の認知活動や行動をコントロールしながら、効果的に学習目標を達成していく。
そんな「Self-Regulated Learning:自己調整学習」こそが根本的に体を変える上で必要なのです。

クライアントがトレーナーに単に体を委ねるトレーニングではなく、
自らの体に興味を持ち、
自らの体の課題を知り、
自ら主体的に課題を解決しようとする。

そんな「自律」からの「自立」を促す、
教育的トレーニングこそが本質的な運動指導であると私たちは信じています。